従業員の通勤事故のリスク対策をとっていますか?

会社が通勤時の事故発生をめぐり責任追及されるケースが増加

 
 2017年10月1日、事故死したトラック運転手の遺族が、原因は過重労働だとして会社に約1億円の損害賠償を求める訴えを起こしました。
 同様に、通勤途中で発生した事故をめぐり会社が責任追及されるケースが増えています。

上司も書類送検されたケース

 2017年10月、業務で公用ワゴン車を運転中に兵庫県川西市選挙管理委員会の職員が5人を死傷させる事故が発生しました。職員は、当時、参議院選挙対応で約1カ月間休みがなく、200時間超の時間外労働を行っていました。2018年4月23日、運転していた職員は自動車運転処罰法違反(過失致死傷)で書類送検され、また過労状態を知りながら運転を命じたとして、上司も道路交通法違反(過労運転下命)で書類送検されています。

裁判で和解が成立したケース

 
 2018年2月8日、横浜地方裁判所川崎支部において、ある事件の和解が成立しました。この事件は、バイクで帰宅途中に居眠り運転で事故死した従業員の遺族が、原因は過重労働だとして会社に損害賠償を求めたもので、会社が7,590万円支払うこととなりました。従業員は約22時間の徹夜勤務明けで、事故前1カ月の時間外労働は約90時間でした。

裁判官は通勤中の会社の安全配慮義務に言及

 上記事件で、裁判所は、通勤時にも会社は社員が過労による事故を起こさないようにする安全配慮義務があると認定し、公共交通機関の利用を指示するなどして事故を回避すべきであったと指摘しています。
 和解の内容には、再発防止策として勤務間インターバル制度の導入、男女別仮眠室の設置、深夜タクシーチケットの交付などの実施も盛り込まれました。これまで通勤中の事故で会社の責任を認めたものはほとんどなかったため、会社の安全配慮義務が従業員の通勤についても認められることを示した画期的な判断とされています。

「労働時間把握」だけではリスクを回避できない

 働き方改革法では、労働時間把握が使用者の義務として課されることとなりました。
 しかし、会社に求められるのは、省令に定める方法により労働時間を記録等するだけでなく、過労状態で従業員が事故を起こさないような具体的対策を講じることであると認識する必要があるでしょう。